豊受大御神とは?伊勢神宮の外宮に祀られる「天照大御神の食事を司る神」
豊受大御神(とようけのおおみかみ)は、伊勢神宮の外宮「豊受大神宮」に祀られている神です。
伊勢神宮の中心には、天照大御神を祀る内宮と、豊受大御神を祀る外宮があります。
豊受大御神は食物や穀物を司る神であり、伊勢神宮では特に、天照大御神の食事を司る「御饌都神(みけつかみ)」として大切に祀られています。
豊受大御神はどんな神様?
豊受大御神は、食物・穀物をはじめ、人々の暮らしを支える衣食住や産業と深く結びついた神です。
「御饌(みけ)」とは、神に供える食事のこと。
伊勢神宮では豊受大御神を天照大御神の「御饌都神」としており、外宮では現在も朝夕二度、神々へ食事を供える「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」が行われています。
豊受大御神は、もともと伊勢の神ではなかった
豊受大御神の鎮座伝承には、天照大御神が深く関わっています。
伊勢神宮に伝わる由緒では、雄略天皇の夢に天照大御神が現れ、自分一柱だけでは食事を安らかに召し上がることができないため、丹波国の比治の真名井にいる「等由気大神(とゆけのおおかみ)」を伊勢へ迎えるよう告げたとされています。
これを受け、豊受大御神は丹波から伊勢の度会(わたらい)の山田原へ迎えられました。
これが現在の外宮・豊受大神宮の始まりと伝えられています。
伊勢神宮では、その鎮座を雄略天皇22年(478年)と伝えており、内宮の鎮座から約500年後としています。
なぜ外宮から先に参拝するの?
伊勢神宮では、
外宮 → 内宮
の順に参拝するのが古くからのならわしです。
これは神宮の祭典で「外宮先祭(げくうせんさい)」といって、まず外宮で祭儀を行い、その後に内宮で行うことに由来します。
天照大御神へ食事を奉る豊受大御神を先に祀るという祭祀の順序が、参拝のならわしにもつながっているのです。
内宮と外宮は同格なの?
内宮と外宮は「二所大神宮」とも称され、どちらも伊勢神宮を構成する非常に重要なお宮です。
ただし、伊勢神宮の中心となるのは皇大神宮に祀られる天照大御神であり、内宮と外宮がまったく同格という意味ではありません。
豊受大御神は、天照大御神の御饌都神として外宮に祀られています。
豊受大御神と宇迦之御魂神は同じ神?
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)も、稲・穀物・食物を司り、稲荷信仰と深く結びつく神です。
そのため後世には豊受大御神と関連づけられたり、同一視されたりすることがあります。
しかし古典上、豊受大御神と宇迦之御魂神はそれぞれ異なる神として登場するため、最初から同じ神だったと考えるのは適切ではありません。
同じように、受持神(うけもちのかみ)や大宜都比売神(おおげつひめのかみ)も食物を司りますが、それぞれ別の神です。
日本神話には「食」を司る神が一柱だけではなく、複数存在しているのです。
豊受大御神は女神なの?
豊受大御神は、一般には女神として信仰・表現されることの多い神です。
ただし、古い伝承には現代の人物のような詳細な容姿や性別の描写があるわけではありません。
そのため、「食物を司る女神として広く信仰されている」と捉えるのが分かりやすいでしょう。
多賀宮には豊受大御神の「荒御魂」が祀られている
外宮の正宮近くにある「多賀宮(たかのみや)」は、外宮第一の別宮です。
ここに祀られているのは、
豊受大御神荒御魂(とようけのおおみかみのあらみたま)。
別の神ではなく、豊受大御神の「荒御魂」です。
荒御魂とは、神の御魂のうち、格別に顕著な神威を表す働きとされます。
外宮では正宮に豊受大御神、多賀宮にその荒御魂が祀られているのです。
豊受大御神のご利益
豊受大御神は、人間が生きていくうえで欠かせない「食」を司る神です。
そこから五穀豊穣や農業だけでなく、衣食住や産業の守護へと信仰が広がってきました。
代表的なご利益としては、
商売繁盛
家内安全
開運
五穀豊穣
産業繁栄
などが挙げられます。
約1500年続く「神様の食事」
豊受大御神の特徴を最もよく表しているのが、外宮で毎日行われている「日別朝夕大御饌祭」です。
朝と夕、一日二度。
天照大御神をはじめとする神々へ食事が供えられます。
外宮に豊受大御神が迎えられたという伝承は約1500年前のものですが、「神々の食事を司る」という役割は現在の祭祀にも受け継がれています。
八岐大蛇を退治する須佐之男命や、国造りを行う大国主命のような華やかな神話を持つ神ではありません。
それでも、食べ物が実り、それをいただき、命をつないでいくことは、人間の暮らしの根幹です。
豊受大御神は、そうした「生きるために欠かせない恵み」を司り、今も伊勢神宮の外宮で大切に祀られている神なのです。
