八坂神社とは?京都・祇園を守り続ける厄除けの神社
京都・祇園の東端に鎮座する八坂神社(やさかじんじゃ)。
朱色の西楼門は京都を代表する風景の一つとして知られ、四条通を東へ進むと、その先に堂々とした姿を現します。
古くから京都の人々には「祇園さん」の名で親しまれ、現在では全国に約2,300社ある八坂神社や祇園信仰の神社の総本社とされています。
八坂神社の主祭神は、日本神話で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したことで知られる素戔嗚尊(すさのをのみこと)。
荒々しく力強い印象を持つ神様ですが、八坂神社では古くから災厄や疫病を退ける神として篤い信仰を集めてきました。
そして、この「災いを祓う」という信仰から生まれたのが、京都を代表する祇園祭です。
華やかな山鉾巡行で知られる祇園祭ですが、その始まりをたどると、そこには疫病に苦しんだ平安時代の人々の切実な祈りがありました。
八坂神社の御祭神
八坂神社の本殿では、中心となる中御座に素戔嗚尊がお祀りされています。
東御座には、素戔嗚尊の妻である櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)などが祀られ、西御座には素戔嗚尊の御子神である八柱御子神(やはしらのみこがみ)が祀られています。
素戔嗚尊と櫛稲田姫命といえば、有名なのが八岐大蛇の神話です。
出雲へ降り立った素戔嗚尊は、八岐大蛇の生贄にされようとしていた櫛稲田姫命と出会います。
素戔嗚尊は櫛稲田姫命を妻に迎えることを約束し、知恵を使って八岐大蛇を退治しました。
その後、二柱は夫婦となります。
恐ろしい大蛇から人々と櫛稲田姫命を救ったこの神話は、素戔嗚尊が災厄を退ける神として信仰される背景の一つとなっています。
なぜ八坂神社は「厄除け」で有名なの?
八坂神社を理解するうえで重要なのが、疫病との関係です。
現代では病気が流行すれば、その原因をウイルスや細菌などから考えます。
しかし医学が発達していなかった時代、人々にとって突然広がる疫病は、原因の分からない恐ろしい災いでした。
平安時代には、疫病や災害が怨霊や荒ぶる霊によって引き起こされると考える「御霊信仰」が広がります。
八坂神社の歴史でも、877年に疫病が流行した際、「祇園社」へ祈りが捧げられ、流行が収まったことが神社発展の契機になったと伝えられています。
こうして八坂神社は、疫病や災厄を鎮める神社として人々から信仰されていきました。
祇園祭は「疫病を鎮める祭り」から始まった
現在の祇園祭を見ると、豪華な山鉾や京都の夏を彩る華やかな祭りという印象が強いでしょう。
しかし、その原点にあるのは疫病退散への祈りです。
平安時代の869年、疫病が流行する中、神泉苑で祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)が行われたことが、祇園祭の始まりとされています。
つまり祇園祭は、単なる夏祭りとして始まったわけではありません。
「どうか疫病を鎮めてください」
そんな人々の祈りから始まった祭りなのです。
千年以上の時を経た現在も祇園祭が続いていることを考えると、八坂神社が京都の人々にとってどれほど重要な存在だったのかが分かります。
八坂神社は昔「祇園社」だった
八坂神社は、昔から現在の名前だったわけではありません。
長い歴史の中では「祇園社」や「祇園感神院」などと呼ばれていました。
ここには、日本独特の「神仏習合」が深く関係しています。
かつての日本では、神道と仏教は現在のようにはっきり分けられておらず、日本の神と仏教の仏が結びついて信仰されることが珍しくありませんでした。
八坂神社の素戔嗚尊も、かつては牛頭天王(ごずてんのう)と深く結びついて信仰されていました。
牛頭天王は疫病や災厄と関係する神格を持ち、その強大な力によって逆に疫病を鎮めてもらおうとする信仰が広がりました。
八坂神社の公式由緒でも、主祭神・素戔嗚尊は「往古牛頭天王とも称し」と説明されています。
その後、明治時代に神道と仏教を分離する政策が進められ、「八坂神社」という現在の名称へと変わっていきました。
だから今でも京都の人々が八坂神社を「祇園さん」と呼ぶのは、この神社が長い間「祇園社」として信仰されてきた歴史の名残でもあるのです。
八坂神社の本殿
境内の中心に建つ本殿は、現在、国宝に指定されています。
現在の本殿は承応3年(1654年)に建立されたものです。
八坂神社の本殿で特徴的なのが、本殿と拝殿を一つの大きな屋根で覆う独特の建築です。
「祇園造」と呼ばれる八坂神社を代表する建築様式で、非常に大きな屋根が神殿全体を包み込むような姿をしています。
そして八坂神社には、もう一つ興味深い伝承があります。
本殿の下には大きな池があり、そこには青龍が棲む「龍穴」があると伝えられているのです。
京都の東に位置する八坂神社と、東方を守護するとされる青龍。
神話や信仰だけでなく、こうした伝承が残されているところも八坂神社の面白さです。
八坂神社は縁結びの神社でもある
八坂神社というと厄除けや疫病退散の印象が強いですが、縁結びの信仰もあります。
本殿には素戔嗚尊と、その妻である櫛稲田姫命がお祀りされています。
八岐大蛇から櫛稲田姫命を救い、その後夫婦となった二柱です。
八坂神社の本殿でも、厄除け・災難除けだけでなく、家内安全・商売繁昌・縁結び・学業成就・安産などが御神徳として案内されています。
「悪いものを退ける」だけではなく、その先にある良い縁や家庭の幸せまで願える神社なのです。
八坂神社のご利益
八坂神社では、厄除け・災難除け・家内安全・商売繁盛・縁結び・学業成就・安産など、さまざまな祈願が行われています。
さらに境内の摂社・末社まで含めると、疫病退散、美容、芸能、身体健康、方除けなど、非常に幅広い願いと結びついています。
その中でも八坂神社を象徴するものを一つ挙げるなら、やはり厄除け・災難除け・疫病退散でしょう。
八岐大蛇という恐ろしい災厄を退けた素戔嗚尊。
疫病を鎮めるために祈りを捧げた平安時代の人々。
そこから生まれ、千年以上続いてきた祇園祭。
八坂神社の長い歴史には、一貫して「災いを鎮め、人々の暮らしを守る」という祈りが流れています。
華やかな祇園の中心にありながら、その信仰の原点には疫病や災厄に立ち向かってきた人々の切実な願いがある。
八坂神社は、京都の町とそこに暮らす人々を長い時代にわたって見守り続けてきた、「祇園さん」の名で愛される厄除けの神社なのです。
